郁子(むべ・うんべ)
町の近くの山は開発されて宅地となり、めったに郁子も見かけなくなりましたが、今日は珍しく郁子を見つけました。といっても山の中ではなくスーパーの店頭で。おそらく栽培された物でしょう。
珍しいので家族に味わってもらおうと買って帰りました。食べられる部分はほとんどありませんが、あの柔らかな甘みがたまりません。しかし家族は誰も手をつけません。仕方なく私が全部いただきました。
郁子は長寿の実と言われます。なぜかと言うと昔々天智天皇が出合った老夫婦に「どうしてそのように長寿なのですか」と尋ねたところ、老夫婦は「この実を食べているからです」と言って実を差し出しました。天智天皇はその実を見て「むべなるかな(いかにももっともなことである)」と答えたところから「むべ」と呼ばれるようになったとか。
長寿はともかくとして、春に咲く白い花、秋に生る紫の実はともに晩春と初秋の季語として味わい深いものです。